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2012年5月18日相続欠格・相続人の廃除
推定相続人の廃除はどのような手続で行えばよいか?
2012年5月17日相続欠格・相続人の廃除
推定相続人の廃除事由とは?
2012年5月15日相続欠格・相続人の廃除
推定相続人の廃除とは?
2012年5月14日相続欠格・相続人の廃除
推定相続人から相続資格を奪うことはできるか?
2012年4月25日相続欠格・相続人の廃除
被相続人は相続欠格者を宥恕する(赦す)ことはできるか?

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推定相続人の廃除はどのような手続で行えばよいか?

推定相続人の廃除の手続

推定相続人の廃除には,被相続人が生前に行う場合(通常の場合。「生前廃除」と呼ばれます。)と,遺言によって行う場合(「遺言廃除」と呼ばれます。)とがあります。

生前廃除の手続

被相続人が,その生存中に推定相続人の廃除を請求する場合を生前廃除といいます。

廃除の請求権者と相手方

生前廃除の場合における請求権者は,被相続人です。

他方,廃除の相手方は,言うまでもなく推定相続人ですが,すべての推定相続人が対象となるわけではありません。廃除ができるのは,遺留分を有する推定相続人です。

遺留分を有しない推定相続人に相続財産を渡したくないのであれば,その人には相続財産を渡さないという遺言を作成しておけばよいだけだからです。

したがって,具体的に言えば,廃除の相手方は,相続人となるであろう配偶者,子,または直系尊属(兄弟姉妹は除くということです。)ということになります。

廃除請求をすべき裁判所

生前廃除の場合には,請求権者である被相続人の住所地を管轄する家庭裁判所に,廃除の請求をする必要があります(家事事件手続法188条1項)。

具体的には,上記管轄家庭裁判所に対し,推定相続人廃除審判の申立書を提出する方法によって廃除請求を申し立てることになります。

家庭裁判所の審判

推定相続人の廃除は,遺産分割などの相続に関する事件と異なり,調停をすることのできない事件に分類されます(家事事件手続法188条1項,別表第1の86)。

したがって,廃除請求の手続は,原則として審判手続として行われることになります。この手続中でも,調停が行われる場合がありますが,調停で仮に合意に至ったとしても,最終的には,その調停の内容も参考としつつ,裁判所が審判によって決定をすることにはなります。

市区町村への届出等

推定相続人の廃除を認める審判が決したとしても,実は,それだけでは足りません。審判が確定した後,市区町村にその旨を届け出る必要があります。

具体的には,被相続人の戸籍のある市区町村役場に,前記審判書を添付して,推定相続人の廃除の届出をしておく必要があります。これをすると,戸籍に推定相続人が廃除された旨が記載されます。

戸籍に記載がなされれば,後日,相続登記をする際などに,戸籍を添付すればよいだけになるなど,相続後の手続に役に立ちますので,忘れずに行う必要があります。

遺言廃除の手続

前記のとおり,推定相続人の廃除は,遺言で定めておく必要もあります。ただし,この場合,後日の紛争を予防するために,遺言で遺言執行者も定めておくべきでしょう。

遺言廃除をした場合,相続開始後,遺言執行者が,被相続人の最後の住所地を管轄する裁判所に,推定相続人の廃除を請求することになります。

したがって,遺言廃除の場合は,遺言執行者が請求権者となります。その後の手続は,基本的に,上記生前廃除の場合と同様です。

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推定相続人の廃除事由とは?

相続人の廃除

推定相続人(相続開始後に相続人となる予定の人)に一定の事由があった場合,被相続人は,この相続人の相続資格をはく奪することができます。これを推定相続人の廃除といいます。

この相続人の廃除が認められるのは,上記のとおり,一定の事由がある場合に限られます。この廃除の原因となる一定の事由のことを「廃除事由」ということがあります。

相続人の廃除事由は,以下のとおりです。

  • 被相続人に対し虐待をした場合
  • 被相続人に対し重大な侮辱を加えた場合
  • その他の著しい非行があった場合

上記のとおり,法は3つの廃除事由を定めています。

しかし,廃除は,推定相続人から相続資格のすべてをはく奪する制度です。相続分を減少させるようなことは遺言によってもできますが,この廃除は,それにとどまらず,法が法定相続人の最低限度の権利として保障している遺留分まではく奪する強力な効果を持つ制度です。

したがって,その運用も非常に厳格です。最低限度の権利まで奪う制度であることから,裁判所も廃除の適用には非常に慎重で,実際には,推定相続人から遺留分までも奪わざるを得ないといえるほどに重大な場合,具体的には後述のとおり犯罪やそれに準ずるほどに悪質な場合でなければ,廃除事由として認めないという運用になっているといわれています。

被相続人に対する虐待・重大な侮辱

前記廃除事由のうち,被相続人に対する「虐待」や「重大な侮辱」というのは,特に説明するまでもないでしょう。言葉どおりの意味です。

もっとも,何が虐待に当たり,何が重大な侮辱に当たるのかという評価は難しいものがあります。

実際には,傷害罪に当たるまたはそれに準ずるような虐待行為や,侮辱罪に当たるまたはそれに準ずるような侮辱行為でなければ,廃除事由に該当しないと判断されることが多いといわれています。

その他の著しい非行

廃除事由には,前記虐待や重大な侮辱だけでなく,その他の著しい非行もあります。

虐待や重大な侮辱に列記されていることからして,それらと同程度の著しい非行である必要があります。

前記のとおり,実際の裁判では,犯罪行為に該当またはそれに準ずるような虐待や侮辱でなければ廃除事由として認められないことからすると,この著しい非行も,そのような犯罪行為またはそれに準ずるほどに悪質で,被相続人その他の家族・親族との間の信頼関係(家族的協同関係などと呼ばれることもあります。)を破壊したことに対する制裁を与えざるを得ないほどの非行でなければ,廃除事由とは認められないでしょう。

具体的には,以下のような行為が著しい非行に該当するものとして挙げられます。

  • 犯罪行為
  • 被相続人を遺棄する行為
  • 被相続人の財産を浪費する行為

もちろん上記行為だけに限られませんが,単純に素行が不良だったという程度では,廃除事由として認められることはないでしょう。ただし,単独では著しい非行とはいえない場合であっても,複数の非行行為が積み重なり,その結果家族としての協力関係や信頼関係が失われているとみられるような場合には,廃除が認められたという裁判例はあります。

また,非行行為は,虐待や重大な侮辱と異なり,被相続人に対するものでなくても廃除原因となりうると解されています。ただし,他者に対する犯罪行為等は,廃除原因となる重大な非行には当たらないとした裁判例もあり,犯罪の内容や被相続人を含む家族が受けた影響等によって,廃除事由となるかどうかの結論は異なってくるものと思われます。

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推定相続人の廃除とは?

相続人の廃除

被相続人を虐待・侮辱するなどの行為をした相続人に対して,自分の財産を相続させたくないという場合はあり得ます。

このような場合,遺言によって相続分法定相続分と異なるものにすることはできます。しかし,その推定相続人が遺留分を有する法定相続人(子,直系尊属,配偶者)であった場合,遺言では遺留分までははく奪することはできません。

そこで,法は,被相続人の意思を尊重する制度として,推定相続人の廃除という制度を設けています。

相続人の廃除とは,被相続人対して虐待,重大な侮辱その他著しい非行をした場合に,被相続人の意思に基づいて,その推定相続人から相続資格を奪うという制度です。

この相続人の廃除は,上記のとおり,被相続人の意思を尊重するという趣旨の他に,被相続人と推定相続人との人的信頼関係を破壊したことに対する民事的制裁の意味も有しています。

廃除事由

相続人の廃除が認められるのは,遺留分を有する推定相続人に以下の事由がある場合です(民法892条)。

  • 被相続人に対し虐待をした場合
  • 被相続人に対し重大な侮辱を加えた場合
  • その他の著しい非行があった場合

相続人の廃除が認められる推定相続人は,遺留分を有する推定相続人(子,直系尊属または配偶者)です。

相続人の廃除は,遺留分も含めて相続財産相続させないというところに意味があります。遺留分を有しない推定相続人(兄弟姉妹)については,遺言で相続分を付与しなければよいだけ(遺留分がない以上,遺言で相続分を指定されなければ何らの反論もできなくなります。)ですので,廃除の対象となっていないのです。

廃除の手続

相続人の廃除は,家庭裁判所に請求(申立て)をする必要があります。そして,家庭裁判所の調停・審判によって決せられることになります。

相続人の廃除は,遺言によってすることもできます。ただし,この遺言廃除の場合も,相続開始後,遺言執行者が家庭裁判所に廃除を申し立てることになります。

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推定相続人から相続資格を奪うことはできるか?

推定相続人から相続資格を奪うことができる場合

相続が開始された時相続人となるべき人のことを,相続開始前は「推定相続人」と呼んでいます。

相続欠格は,一定の欠格事由がある場合に,当然にその相続資格が失われることを意味しますから,相続資格を奪うという場合とは違います。

ここでいう相続資格を「奪う」とは,被相続人の意思で,特定の相続人から相続資格をはく奪する場合のことをいいます。

推定相続人から相続資格を奪う方法としては,「遺言」と「相続人の廃除」が考えられます。

遺言による相続資格のはく奪

遺言の場合は,厳密にいえば,相続資格をはく奪することができるというわけではありません。

遺言ですることができるのは,相続分法定相続分とは異なる配分にすることができるというだけです。ある推定相続人を相続人ではないものとする,というような遺言をすることはできません。このような遺言をしても効力を生じません(※ただし,後記の相続人の廃除を遺言に記載しておくことはできます。また,相続人でないものとするという記載が,遺言で相続人の廃除をする意思で記載されたものであるという認定がなされる場合もあり得ます。)。

もっとも,遺言で,ある特定の相続人にだけはまったく財産を相続させないということは可能です。

例えば,子AとBが推定相続人である場合,法定相続分は2分の1ずつですが,遺言で,Aにすべての財産を相続させるという遺言をすることは可能であるということです。

この場合,Bは相続資格を奪われたわけではありませんが,事実上,財産の相続を受けられなくなるので,相続資格を奪われるのに等しい効果が生ずるといえるでしょう。

ただし,兄弟姉妹を除く法定相続人には,遺留分があります。この遺留分は遺言によっても侵害することができません。したがって,遺留分を侵害する限度で遺言は効力を失います。

上記の例でいうと,Bには遺留分があります。Bの遺留分は相続財産の4分の1です。したがって,この4分の1の限度で遺言は効力を失い,相続開始後,Bは全財産を相続したAに対して,この遺留分に相当する財産の引渡しを請求することができます。

相続人の廃除による相続資格のはく奪

前記のとおり,遺言の場合には,推定相続人が遺留分権者であれば,すべて相続できないようにすることはできません。

もっとも,被相続人に対して虐待をしてきたり,見捨てていたりしたような推定相続人に,遺留分すら相続させたくないという場合はあるでしょう。

そこで,被相続人の意思を尊重するため,相続人の廃除という制度を用意しています。

具体的にいえば,被相続人に対する虐待,重大な侮辱その他著しい非行があった推定相続人(遺留分のある相続人に限る)の相続資格をはく奪するという制度です。

この相続人の廃除が認められると,その推定相続人は相続資格を失い,相続分はおろか遺留分もなくなることになります。

なお,相続人の廃除は,遺言で定めておくこともできます。

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被相続人は相続欠格者を宥恕する(赦す)ことはできるか?

相続欠格者の宥恕の問題

これまでご説明してきたとおり,一定の事由がある場合,法定相続人であっても相続権を失う場合があります。相続欠格と呼ばれる場合です。

相続欠格事由がある場合,その事由のある相続人は相続を受けることができなくなります。

ここで問題となるのは,被相続人が,その相続欠格事由のある相続人に対し,宥恕(ゆうじょ)を与えた場合です。宥恕とは,赦すという意味です。

つまり,被相続人が,相続欠格者を赦し,相続を受けてもよいという意思表示をした場合,はたしてその相続欠格者である相続人は相続権を回復することができるのか,という問題です。

相続欠格者の宥恕に関する見解

相続欠格事由がある場合に,その相続欠格者がなぜ相続権を失うことになるのかという点について,判例(最二小判昭和56年4月3日最三小判平成9年1月28日等)は,民法891条5号の事案ですが,「遺言に関し著しく不当な干渉行為をした相続人に対して相続人となる資格を失わせるという民事上の制裁を課そうとするところにある」としています。

この趣旨は,5号以外の民法891条各号にも当てはまると考えられますので,判例は,相続欠格事由の趣旨につき,相続制度という公益的な制度の基盤を侵害する行為に対する民事的制裁と捉えていると解釈することができます。

そうすると,公益的な制度侵害に対する民事上の制裁と考えるのですから,(犯罪ではないですが,それと近い考え方として)被相続人の意思に関わりなく制裁を与えるべきであるということになります。

つまり,仮に被相続人が宥恕を与えたとしても,相続欠格者は相続権を回復しないと考えるということです。

他方,そもそも法が遺言という被相続人の意思を尊重する制度を定めている趣旨からして,相続においては,被相続人の財産処分の意思は最大限尊重されるべきであるというように考えるならば,相続欠格者を宥恕するという被相続人の意思も最大限尊重されるべきということになります。

したがって,この考え方によれば,被相続人が相続欠格者を宥恕したならば,相続欠格者の相続権は回復されるという考え方につながるでしょう。

相続欠格者を宥恕できるか

前記のとおり,民事上の制裁の面を重く捉えるか,被相続人の意思の尊重を重く捉えるかによって,結論がことなってきます。

この点について明確に判示した判例は今のところありませんが,学説では両論あり,被相続人の意思の尊重を重く見て,相続欠格者に対する宥恕によって相続権も回復されるという見解が有力とされています。

もっとも,この有力説に対しても,それならば生前に遺贈すれば足りるのであり,あえて宥恕を有効とする必要はないのではないかという反論もなされているところです。ただし,遺贈ということになると,遺留分の問題は発生してくるでしょう。

この点については,まだ定まった見解はないといってよいでしょう。

私見としては,被相続人の意思は最大限尊重されるべきですが,やはり制裁的要素は加味すべきと考えますので,被相続人の方が相続欠格者を宥恕する場合には遺贈の方法をとり,制裁については遺留分によって調整するのが妥当ではないかと考えています。

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相続人が遺言書を破棄・隠匿した行為が,相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは相続欠格事由に当たらないとした判例(最三小判平成9年1月28日)

民法891条5号

民法891条3号から5号までは,被相続人の遺言作成行為や遺言書の偽造等の行為相続欠格事由に該当することを規定しています。

これらの相続欠格事由に該当する行為については,故意に基づくものであることが必要となることは争いはありません。しかし,それ以外に,不当な利益を得る目的までも必要となるのかについては争いがあります。

この問題については,前回ご説明したとおり,最二小判昭和56年4月3日で,(明記はされていませんが)不当な利益を得る目的が必要であるという解釈がなされています。

今回ご紹介する最高裁判所第三小法廷平成9年1月28日判決(最三小判平成9年1月28日)も,上記最二小判昭和56年4月3日を踏襲しています。

最三小判平成9年1月28日

最三小判平成9年1月28日は,以下のとおり判示しています(一部抜粋)。

相続人が相続に関する被相続人の遺言書を破棄又は隠匿した場合において,相続人の右行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは,右相続人は,民法891条5号所定の相続欠格者には当たらないものと解するのが相当である。けだし,同条5号の趣旨は遺言に関し著しく不当な干渉行為をした相続人に対して相続人となる資格を失わせるという民事上の制裁を課そうとするところにあるが(最高裁昭和55年(オ)第596号同56年4月3日第二小法廷判決・民集35巻3号431頁参照),遺言書の破棄又は隠匿行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは,これを遺言に関する著しく不当な干渉行為ということはできず,このような行為をした者に相続人となる資格を失わせるという厳しい制裁を課することは,同条5号の趣旨に沿わないからである。

→ 上記判決の全文(裁判所HPから)

最三小判平成9年1月28日は,前記最二小判昭和56年4月3日を引用しつつ,民法891条5号の趣旨は「遺言に関し著しく不当な干渉行為をした相続人に対して相続人となる資格を失わせるという民事上の制裁を課そうとするところにある」としています。

最二小判昭和56年4月3日でははっきりとは判示されていませんでしたが,この最三小判平成9年1月28日は,不当な利益の目的が必要であるかどうかについても,「相続人が相続に関する被相続人の遺言書を破棄又は隠匿した場合において,相続人の右行為が相続に関して不当な利益を目的とするものでなかったときは,右相続人は,民法891条5号所定の相続欠格者には当たらない」という結論を明示しています。

つまり,民法891条5号の相続欠格事由については,不当な利益を得る目的が必要となるということです。

なお,この判決では,3号や4号については触れられていませんが,多数説は同様に不当な利益の目的が必要であると解しています。

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被相続人の意思を実現させるために,相続人が方式不備で無効な遺言書の方式を具備する行為は,相続欠格事由に当たらないとした判例(最二小判昭和56年4月3日)

民法891条5号

民法891条5号は,「相続に関する被相続人の遺言書を偽造し,変造し,破棄し,又は隠匿」する行為は相続欠格事由に当たることを規定しています。

この条文には,偽造や変造等の行為が規定されていますから,故意に基づく行為が対象となることは間違いありませんが,それ以上に,「不当な利益を得る目的」が必要となるかどうかについては規定がありません。

そこで,民法891条(3号から)5号の相続欠格事由に当たるというためには,故意のほかに,不当な利益を得る目的が必要となるのかどうかが問題となってきます。

この問題についての判断を示したのが,今回ご紹介する最高裁判所第二小法廷昭和56年4月3日(最二小判昭和56年4月3日)です。

最二小判昭和56年4月3日

最二小判昭和56年4月3日は,以下のとおり判示しています(一部抜粋)。

 民法891条3号ないし5号の趣旨とするところは遺言に関し著しく不当な干渉行為をした相続人に対し相続人となる資格を失わせるという民事上の制裁を課そうとするにあることにかんがみると,相続に関する被相続人の遺言書がその方式を欠くために無効である場合又は有効な遺言書についてされている訂正がその方式を欠くために無効である場合に,相続人がその方式を具備させることにより有効な遺言書としての外形又は有効な訂正としての外形を作出する行為は,同条5号にいう遺言書の偽造又は変造にあたるけれども,相続人が遺言者たる被相続人の意思を実現させるためにその法形式を整える趣旨で右の行為をしたにすぎないときには,右相続人は同号所定の相続欠格者にはあたらないものと解するのが相当である。

これを本件の場合についてみるに,原審の適法に確定した事実関係の趣旨とするところによれば,本件自筆遺言証書の遺言者であるD名下の印影及び各訂正箇所の訂正印,一葉目と二葉目との間の各契印は,いずれも同人の死亡当時には押されておらず,その後に被上告人Bがこれらの押印行為をして自筆遺言証書としての方式を整えたのであるが,本件遺言証書は遺言者であるDの自筆によるものであつて,同被上告人は右Dの意思を実現させるべく,その法形式を整えるため右の押印行為をしたものにすぎないというのであるから,同被上告人は同法891条5号所定の相続欠格者にあたらないものというべきである。

→ 上記判決の全文(裁判所HPから)

この判決の事案は,被相続人が遺言を作成していたがそれの方式に不備があったため,遺言としての効力を生じないものであったところ,その相続人が,相続開始後に,被相続人の意思を尊重して遺言を有効なものにしようとして,その無効な遺言の方式を具備するように訂正をしたという事案です。

上記判決は,民法891条3号から5号までの遺言作成等に対する不当干渉行為の趣旨を,「遺言に関し著しく不当な干渉行為をした相続人に対し相続人となる資格を失わせるという民事上の制裁を課そうとするにあること」としています。

そして,そのような趣旨からすれば,上記のような相続人による訂正は遺言書の偽造・変造には形式的に当たるけれども,相続欠格事由にはならないとしてます。

つまり,判決では明示はされてませんが,この事案では相続人が被相続人の意思を尊重しようとして偽造等をしたものであり,「不当な利益を得る目的」がないから,相続欠格とはならないとしたというように解釈できます。

したがって,判例も,民法891条5号については,故意のほかに「不当な利益を得る目的」が必要であるという立場をとっているものと考えられています。

なお,この判決では5号が問題となっているので,5号についてだけ判断されていますが,「民法891条3号ないし5号の趣旨とするところは」として3号・4号も含めて同じ趣旨であると解していることからして,3号・4号の場合についても,5号と同様に,故意のほかに不当な利益を得る目的が必要であると考えているものと思われます。

なお,この判決(多数意見)に対しては,遺言に厳格な方式を要求する法の趣旨に反するとして,宮崎裁判官による反対意見(相続欠格に当たるとする意見)もあります。

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遺言(ゆいごん・いごん)とは?

遺言(ゆいごん・いごん)の意義

遺言」という言葉は,一般的にも広く知られていると思います。法的にいえば,遺言とは,被相続人の最終の意思表示のことをいいます。

「遺言」については「ゆいごん」と読まれるのが一般的でしょうが,法律上は,「いごん」と読まれています。

被相続人の最終の意思表示とは,要するに,自分の死後に生じることになる財産の処分等の法律行為に対しても,自分の意思表示の効力を及ぼすことができるということです。

は,生前であれば,自由に法律行為をして自分の法律関係を形成することができます。しかし,人は死亡すれば権利義務の主体でなくなるので,本来であれば,自分の死後に生じる法律関係に影響を及ぼすことはできないはずです。

しかし,自分が築いてきた財産等についてその死後は何も影響を及ぼすことができないとすると,その人の意思に反する結果となる可能性があり,個人の私有財産を保障する法の趣旨に反することになるおそれがあります。

そこで,被相続人の意思を尊重して私有財産制を実質的に保障するために,人の意思表示の効力をその人の死後に生ずる法律行為にまで及ぼすことができるように財産処分の自由を拡大したものが,この「遺言」という制度なのです。

遺言の効力

前記のとおり,遺言をすれば,ご自身の遺志を死後にも尊重してもらうように取り計らうことができます。

例えば,相続人が複数いる場合に,遺産(相続財産)のうち不動産は妻に,遺産のうち預貯金は長男に,遺産のうち自動車は長女に,などのように相続における財産の配分の仕方を決めておくことなどができるということです。

もっとも,遺言で決めることができるのは,基本的に財産関係です。身分関係については,死後認知など一定の場合を除いて,遺言書に記載したとしても法的な効力を生じません。

また,遺言は要式行為です。法律の定める方式に従って遺言書を作成する必要があります。この方式に従って作成されていない場合には,法的な効力を生じません。法定の方式としては,自筆証書遺言,秘密証書遺言,公正証書遺言などがあります。

遺言を作成しておく意味

前記のとおり,遺言を作成しておけば,ご自身の遺志を相続人たちに尊重してもらうことができます。

自分で築いてきた財産の帰趨を,ある程度,ご自身の遺志に沿った形で相続人に配分することができるというわけです。

また,遺言を作成しておくことは,被相続人の意思を尊重するという意味だけでなく,相続人にとってもメリットがあります。

遺言を作成せずに相続が開始してしまった場合,場合によっては大きな紛争となることもあります。「争続」と呼ばれる所以です。

しかし,遺言を作成しておけば,そのような紛争を最小限にすることも可能です。相続人に指針を与えるという意味でも,遺言を作成しておくことにはメリットがあるといえるでしょう。

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2012年4月22日

カテゴリー:遺言とは 遺言(いごん・ゆいごん)

相続欠格事由となる遺言作成行為に対する不当な干渉行為とは?

相続欠格事由

これまでもご説明してきたように,一定の事由があると,法定相続人となるべきはずの人であっても,相続人の資格が失われることがあります。これを「相続欠格」といいます。相続欠格の事由は以下のとおりです(民法891条各号)。

  • 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ,又は至らせようとしたために,刑に処せられた者
  • 被相続人の殺害されたことを知って,これを告発せず,又は告訴しなかった者。ただし,その者に是非の弁別がないとき,又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは,この限りでない。
  • 詐欺又は強迫によって,被相続人が相続に関する遺言をし,撤回し,取り消し,又は変更することを妨げた者
  • 詐欺又は強迫によって,被相続人に相続に関する遺言をさせ,撤回させ,取り消させ,又は変更させた者
  • 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し,変造し,破棄し,又は隠匿した者

このうちの1号・2号は,被相続人等に対する生命侵害行為が相続欠格事由となっており,3号以下は被相続人の遺言作成行為への不当な干渉行為が相続欠格事由となっています。生命侵害関連行為については前回ご説明いたしましたので,今回は,このうちの遺言作成行為に対する不当な干渉行為による相続欠格事由についてご説明いたします。

遺言作成行為に対する不当な干渉行為

上記相続欠格事由の3番目(3号)の場合は,詐欺や強迫によって,被相続人が遺言を作成・撤回・取消し・変更しようとするのを妨害する行為です。

これに対し,4番目(4号)は,詐欺や強迫によって,被相続人に遺言の作成・撤回・取消し・変更をさせる行為です。

また,遺言書の偽造・変造・破棄・隠匿も相続欠格事由となります。

ただし,これらの不当干渉行為というには,これらの行為をするについて故意があるだけでなく,さらに,不当に利益を得ようとする目的もなければならないと考えられています。

判例も,5号の場合の事例ですが,同様に不当な利益を得る目的がない場合には,相続欠格事由に該当しないとしています(最二小判昭和56年4月3日,最三小判平成9年1月28日等)。

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相続欠格事由となる生命侵害関連行為とは?

相続欠格事由

すでにご説明したとおり,一定の事由があると,法定相続人となるべきはずの人であっても,相続人の資格が失われることがあります。これを「相続欠格」といいます。相続欠格の事由は以下のとおりです(民法891条各号)。

  1. 故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ,又は至らせようとしたために,刑に処せられた者
  2. 被相続人の殺害されたことを知って,これを告発せず,又は告訴しなかった者。ただし,その者に是非の弁別がないとき,又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは,この限りでない。
  3. 詐欺又は強迫によって,被相続人が相続に関する遺言をし,撤回し,取り消し,又は変更することを妨げた者
  4. 詐欺又は強迫によって,被相続人に相続に関する遺言をさせ,撤回させ,取り消させ,又は変更させた者
  5. 相続に関する被相続人の遺言書を偽造し,変造し,破棄し,又は隠匿した者

このうちの1号・2号は,被相続人等に対する生命侵害行為が相続欠格事由となっており,3号以下は被相続人の遺言作成行為への不当な干渉行為が相続欠格事由となっています。今回は,このうちの生命侵害関連行為による相続欠格事由についてご説明いたします。

1号の場合

「故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ,又は至らせようとしたために,刑に処せられた者」は相続人の資格を失います。

故意に死亡するに至らせた場合とは,つまり,殺人罪に当たる行為=殺害行為をしたということです。過失致死等の過失犯は含まれません。また,故意行為に基づくものであっても結果的加重犯である傷害致死罪等も含まれないと解されています。

故意に死亡するに至らせようとした場合とは,殺人未遂罪に当たる行為をしたということです。

対象は,被相続人と先順位または同順位の相続人です。後順位の相続人や第三者に対して殺人または殺人未遂をしたとしても,相続資格に影響はありません。

注意すべきなのは,ただ被相続人や先順位・同順位の相続人を殺害または殺人未遂行為をしたことによって刑に処せられていることが必要となるということです。したがって,殺害行為等をしたとしても,捜査や裁判中である場合など,いまだ殺人罪または殺人未遂罪で刑に処せられていない場合には,相続欠格とはなりません。

2号の場合

「被相続人の殺害されたことを知って,これを告発せず,又は告訴しなかった者」は相続人の資格を失います。

この規定は,いってみれば「かたき討ち」的な発想に基づくものです。被相続人が殺されたのにそれを告訴告発しない不届者には相続させる必要はない,というような発想でしょうか。

しかし,現在の法制度では,告訴告発の有無にかかわらず,殺人罪の起訴・不起訴の決定権限は,すべて検察官にあります。相続人が告訴告発しようとしまいと,検察官が起訴するかどうかを決めるということです。

したがって,ほとんど意味のない規定というべきであり,実際にも,この規定によって相続欠格となるという場合はほとんどないと思われます。

被相続人は事故死として扱われているが実は殺されていたということを知りながら,それを告訴告発しないままでいた,というようなごく例外的な場合には,あるいはこの規定の適用があるかもしれません。

なお,この規定は,告訴告発をしなかった推定相続人に是非弁別能力がなかった場合や,その被相続人を殺人した犯人が自分の配偶者や直系血族であった場合には適用されないとされています。

是非弁別能力とは,物事の是非を判断する能力という程度の意味です。例えば,心神喪失の状態にある人などがこれに当たりますが,このような人に告訴告発を強いることはできませんから,適用除外となっています。

また,自分の配偶者や直系血族(例えば,両親や子など)が殺人犯であったとしても,かばいたいという気持ちが生まれてしまうのは人情的にやむを得ないことですから,こちらも適用除外となっているのです。

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